ラシュシュブログ

SINGER シンガー アンティークミシン 豪華キャビネット使用 修理 修復 オーバーホール

SINGER シンガーミシン 1903年式 スコットランド工場製造

「手回しミシン」と、「足踏みミシン」を兼ね備えた大変珍しいタイプのシンガーミシンです
このようなタイプのキャビネット型豪華ミシンは沢山ありますが、
足踏みミシン専用のタイプがほとんどです

こちらのミシンは当時の最高級仕様ミシンで、使用されている木材はマホガニーです
(数ある木材の中でも世界三大銘木に数えられ、人気・知名度が高い木です
ワシントン条約により保護されている木材で、希少性の高さから高級木材として知られています
深みのある赤色です。高級感ある上品な色が愛されており、経年変化でより深みを増していきます)

シンガーミシン

キャビネットタイプでは足踏み式ですが、外すと手回しミシンになります
富裕層向けの中の最高級特別仕様に制作されたものです

1903年時代は まだミシンが普及されていないため、ミシンを購入できる方は富裕層ですが
こちらのタイプはさらに高額なミシンとなっています

シンガー手回しミシン

 

足踏みミシンと言いますと子供のころ母親や祖母が使用していたミシンを思い出しますが、
国産ミシンは、ミシン本体を前に倒して箱の中に収納します
箱自体もこんなに豪華ではなく化粧板を張り合わせたものです
国産ミシンが普及し始めたのは昭和になってからですが、一般家庭に普及し始めたのは
昭和20年以降です

当時は高額過ぎて現金で購入できなかったため、月賦販売が主流です
(毎月、一定額を積立て積立期間が終了するとミシンが届く仕組み)
分割販売を考えたのもシンガーミシンです

ミシン本体を前倒しにして収納するのではなく、エレベーターのように下にさげて収納します
仕掛けが多いミシンでバネの力でミシンを持ち上げてセットします

ミシン本体は、手回しミシンとなっており外して使用することができます
はずみ車の横についているハンドルを回して使用します

1903年式のスコットランド工場で製造されたものです
今から120年前のミシンの「破損修復」と「オーバーホール」、「部品製作」です

エレベータ式のミシン本体収納タイプ、真下にミシン本体が下がります

シンガー アンティーク ミシン

私のところに来たときは、「動かない」「汚れがひどい」「破損している」など大変悪い状態でしたが、
破損個所の修復と、分解掃除などを行い奇麗によみがえりました

破損個所の修復については・・・

・前扉下段の木が左右2枚とも破損 ⇒ 扉を外して復元修理

・前面上段の左右の扉が破損 ⇒ 扉を外して修復加工

・前面左側の引き出しの取手金具の破損 ⇒ 真鍮で制作

・糸調整するところのピンピンバネ破損 ⇒ 新しいピンピンバネを再加工して取付

・糸調整バネの分解掃除

・下糸巻きの分解掃除

・下糸巻きゴムの交換

・ミシン本体のはずみ車の分解掃除

・シャトルボビン及び釜の分解掃除

【左扉破損】
キャビネット 左扉の下部分汚破損です

シンガー SINGER ミシン アンティーク

【右扉破損】
同じく左扉の破損です
扉が外れた状態になっています

シンガー SINGER ミシン アンティーク

【左右の扉】
左右の扉は、上部についているヒンジでのみ取りついている状態です

シンガー SINGER ミシン アンティーク

【破損した扉の修復】
左右の破損した扉を、左右の収まり位置を確認しながら修復しました
アンティーク専用の塗料をイギリスから仕入れて再塗装もできますが、この風味を生かしたいため
再塗装は行いません

シンガー SINGER ミシン アンティーク

鋳物製のキャスターと陶器製のローラー

シンガー SINGER ミシン アンティーク

シンガーミシンは色々な国で生産されました
アメリカ製とヨーロッパ製ですと、私はヨーロッパ製のほうがデザインや色合いが好きです

バイオリン型のシンガーミシンも弊社にて所有しておりますが、
こちらのタイプの「足踏みミシン&手回しミシン兼用」豪華キャビネットタイプは大変貴重なミシンです

シンガー SINGER ミシン アンティーク

 

全てを外して分解掃除をしました

こちらのミシンは、バックプレートが鋳物(プーリーの右側の物)でできています
おそらく1905年くらいまでがこのタイプだと思われます

シンガー SINGER ミシン アンティーク

140年の汚れとくすみ

シンガー SINGER ミシン アンティーク

プーリーの錆がひどかったため、研磨して錆を落としています
彫金歴30年の職人技と、彫金工具のお陰で蘇ります

シンガー SINGER ミシン アンティーク

上糸調子を分解掃除しました
上糸調子ばねが破損していますので、現行の糸調子ばねを取り寄せてみましたが構造が合わずに
再加工しての取り付けとなりました

シンガー SINGER ミシン アンティーク

こちらが既存の取り寄せた「上糸調子ばね」と「下糸巻きゴム」です
上糸調子ばねは、合わなかったため加工しました
下糸巻きゴムも交換しました

シンガー SINGER ミシン アンティーク

こちらが、LA CHOU CHOUの工房です
本来ですと、ジュエリー修理制作を中止に行っています
シャネルのプルミエールはメーカー対応できないものを修理制作していますので
ミシンの復元は、ジュエリーから比べたら簡単です が、道具がないと制作できません

LA CHOU CHOUでは3か所の工房があります

LA CHOU CHOU

艶もなく錆も多かったミシンですが・・・

シンガー SINGER ミシン アンティーク

手回し・プーリ部分と、送り歯・シャトル部分を分解掃除
これから下糸巻き部分を分解掃除

シンガー SINGER ミシン アンティーク

キャビネット左側の上から三段目の取っ手が紛失しており、飾りステーが破損していました
飾りステーは「修復加工」と予備に「新規製作」をしました
外した取付ステーを成分分析して、当時と同じ素材で制作しました
下の写真は新しく制作した飾りステーとネジ(左右の丸い物)、当時の輝きを蘇らせました

シンガー SINGER ミシン アンティーク

 

紛失してしまった取っ手は、新しく制作しました
もちろん当時と同じ素材で制作です
ジュエリー制作を得意としておりますので、この程度の制作ですと簡単です

シンガー SINGER ミシン アンティーク

新しく制作しました、「飾りステー」と「取っ手」、当時の輝きを復元しました 黄金色が美しい

シンガー SINGER ミシン アンティーク

赤い矢印の下の段が「新しく制作した飾りステーと取っ手」で、
キャビネットの上に置いてあるものが「修復」したものです
予備で1個、新しいものを制作したので、気分に合わせて交換できます

シンガー SINGER ミシン アンティーク

この輝きが、今から140年前の輝きと同じです

当時の美しさと豪華さが伝わってきます

シンガー SINGER ミシン アンティーク

140年の年月で、飾りステーと取っ手に風味が増し黒ずんできますが、きれいにクリーニングすると
元の美しさに戻ります
しかし、この歳月の風化もまた一段と時を感じられる美しさです

シンガー SINGER ミシン アンティーク

左右の全面扉開閉修理・後部左右の扉丁番修理・ミシン本体オーバーホールなど完璧に復元しました
足踏みペダル部分には、当時のままのオリジナルの織物が

シンガー SINGER ミシン アンティーク

このシンガーミシンは美し過ぎる
クランクシャフトも木製でできています
大変古いミシンであることがわかります

シンガー SINGER ミシン アンティーク

明治36年当時の給与が10円くらいの時代に、左右2段引き出しの一般的タイプの足踏みミシンが
160円くらいの価格で販売されていました
こちらのタイプのミシンでも富裕層しか購入できない贅沢品でした

シンガー SINGER ミシン アンティーク
明治初期は5円あれば生活がどうにかできた時代です
10円あれば人並みの生活ができました
今の金額に直すと10円=8万円くらいになります
食べてゆくのが精いっぱいの時代です
貯金もできませんし、クレジットなんでない時代です
自転車を所有できる人は裕福な人だけでした
ちなみに、渋沢栄一の明治3年の給与が133円です
通常タイプのミシンが160円ですから、このクラスの人たちが買えるレベルです

豪華キャビネットタイプのミシンですから250円くらいはしたと思われます
物がない時代ですから今でいう車購入金額程度の金銭感覚ではなく
ヨットなどを所有するような感覚です

富裕層中の富裕層向けに制作された特別仕様のミシンと思われます

120年以上前のミシンですが、糸目も綺麗にでて縫えるようになりました
はずみ車も静かに、滑らかに回転しストレスを感じません

古いミシンは、注油しても重たくなりますが、分解掃除をして固着し真っ黒になった古い油を
取り除いて、錆も取り除き、新しい油をさしながら組立直しをする必要があります

このタイプのミシンは国内には数台程度しか、もしかしたらこの1台限りかもしれません

特徴として・・・

・足踏みミシン&手回しミシン兼用タイプ
・ミシン本体はエレベーター式に収納
・豪華飾りステーが取り付けられている
・高級木材マホガニー仕様
・クランクシャフトが木製
・キャビネット底面のキャスターが鋳物製でローラーは陶器製
・彫刻が初めて施されたフェイスプレート(天秤がある部分のプレート)
・足踏みペダルにオリジナル織物
・前面扉は下段観音開き、上段逆観音開き
・上段逆観音開きを開けないとミシン本体が外せないカラクリ仕掛け付き

これだけの仕様が全て揃ったミシンは国内にはないと思われます
大変貴重な1台です

シンガー SINGER ミシン アンティーク

LA CHOU CHOUでは、アンティークミシン 修理部があり
彫金工具などを使用して、破損したミシンの修復、破損した取っ手の修理、
アンティークミシンの分解掃除などを得意としております

世界から集めた工具を使い、一流の職人技でアンティークミシンの修復加工や
オーバーホールを行っています

お電話での問い合わせではなく、LINEやメールで画像添付してください
概算お見積りや、修理内容は画像があると把握しやすいためお問い合わせ時は
画像添付にてお願いいたします

LA CHOU CHOU

もちろん近郊の方は直接のご来店をお勧めします
ご希望の場合は下記までお問い合わせください

 

アンティークミシン【蛇の目ミシン(帝國ミシン)&ブラザーミシン】

 

帝国ミシン(蛇の目ミシン)

 

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LA CHOU CHOU (ラ・シュシュ)アンティークミシン修理部 平尾
群馬県高崎市上並榎町73-3
027-367-8800
毎週 火曜日水曜日定休